
感染症内科
感染症内科
HIV(ヒト免疫不全ウイルス)は、免疫を司るCD4陽性T細胞を破壊し、免疫機能を低下させるウイルスです。進行するとAIDS(後天性免疫不全症候群)を発症し、日和見感染症(健康な人では発症しない感染症)や悪性腫瘍のリスクが増加します。感染経路で、最も多いのは性行為であり、コンドームの未使用、複数の性的パートナーがいる場合にリスクが高くなります。
HIV感染症の進行は、治療を受けないとAIDS発症まで平均8~10年と言われています。しかし、適切な治療を受ければ、発症を防ぎ、健康な生活が可能です。HIVの診断は、血液検査で診断します。病気が進行する前に治療を開始することが大切なために、早期に検査を受けることが重要です。
HIVの治療は、抗ウイルス薬(ART:Antiretroviral Therapy)により、ウイルス量を検出限界以下に抑え、免疫機能を維持することが可能です。生涯治療を継続する必要がありますが、治療により寿命は一般の人とほぼ変わりません。ウイルス量が抑えられれば、他者へ感染させるリスクも低減します(U=U:Undetectable = Untransmittable)。HIVの予防として、PEP(曝露後予防)、PrEP(曝露前予防)が有効ですが、保険適応はされていません。
梅毒は、梅毒トレポネーマという細菌によって引き起こされる性感染症(STI)です。進行すると全身に影響を及ぼし、皮膚・粘膜・神経・心血管系などに障害をもたらします。感染経路は、主に性行為であり、膣性交・肛門性交・口腔性交(オーラルセックス)により感染を起こします。その他、感染妊婦から胎児への母子感染(先天梅毒)も起こります。
梅毒の症状は、感染からの期間に応じて4つの病期に分けられます。第1期梅毒(感染から3~6週間)では、感染部位(性器・口唇など)にしこり(硬性下疳)、無痛性のリンパ節腫脹、第2期梅毒(感染から3~6か月)では、梅毒バラ疹(全身性の発疹)、扁平コンジローマ、脱毛、発熱、第3期・第4期梅毒(感染から10年以上後)では、ゴム腫(皮膚・骨・内臓にできる腫瘤)、神経梅毒・心血管梅毒がみられます。また、無症状の潜伏梅毒として見つかることもあります。
診断は、血液検査で2種類の抗体検査(非特異的検査(STS)と特異的検査(TP抗体検査))を組み合わせて診断します。治療は、ペニシリン系抗生剤で治療を行います。
インフルエンザは、インフルエンザウイルスによって引き起こされる急性呼吸器感染症です。流行はA型とB型が主で、A型は、流行規模が大きく、パンデミックを引き起こす可能性があります。例年冬季(11月~3月)に流行し、感染すると1~5日の潜伏期間の後、急激に発症し、38℃以上の高熱(突然の発熱)、頭痛、倦怠感、筋肉痛、関節痛などの全身症状が強いのが特徴です。気管支炎や肺炎などの合併症を発症しやすく、重症化すると脳炎や心不全を引き起こすことがあります。特に高齢者・乳幼児・基礎疾患(糖尿病、心疾患、呼吸器疾患)を持つ人は重症化しやすく、注意が必要です。
診断は迅速診断キットで行われるが、発熱後短時間では検査で、感染していても、陽性に出ないことがあります。治療には抗インフルエンザ薬が有効です。発症48時間以内に開始することで症状の軽減や合併症の予防に効果があります。
予防としては、インフルエンザワクチン(最も有効な予防法)を10月~12月(免疫がつくまで2週間かかる)に接種することが推奨されます。高齢者や基礎疾患(糖尿病・心疾患・喘息など)がある人、免疫抑制状態の人(がん治療中、免疫抑制剤使用者など)が、曝露を受けた場合に、抗インフルエンザ薬を予防的に内服する方法がありますが、保険適応はありません。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、SARS-CoV-2というウイルスによって引き起こされる感染症です。感染経路としては、飛沫感染(咳・くしゃみ・会話で発生する飛沫を吸い込む)、接触感染(ウイルスが付着した手で口・鼻・目を触る)、空気感染(密閉空間でウイルスを含む微粒子を吸い込む)で感染します。
一般的な症状(軽症~中等症)としては、発熱(37.5℃以上)、咳・喉の痛み、倦怠感・筋肉痛、鼻水・鼻づまり、頭痛、味覚・嗅覚異常、消化器症状(下痢・吐き気)などがあり、重症化した症状(中等症Ⅱ~重症)としては、呼吸困難(息切れ・息苦しさ)、酸素飽和度低下、意識障害、胸痛・動悸の症状が出ます。特に、重症化リスクのある人は、高齢者(65歳以上)、基礎疾患(糖尿病、心疾患、慢性肺疾患など)、肥満(BMI30以上)、免疫不全状態(がん治療中・免疫抑制剤使用など)がある患者です。症状だけで、インフルエンザと鑑別することは困難です。
軽症の治療では、基本:対症療法(解熱剤・鎮咳薬・水分補給など)、中等症の治療では、抗ウイルス薬(中等症以上)が行われ、予防方法としては、基本的な感染対策とワクチン接種が行われます。